2025年3月25日

豊橋市新アリーナ問題で耳にするようになった「PFI事業」。これまでにも豊橋市ではPFI事業として以下の施設について導入されています。どのような施設で導入されているか見てみましょう。
- 豊橋市資源化センター余熱利用施設
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豊橋市は、資源化センターの余熱を有効活用し、市民の健康づくりと交流促進を目的として、温水プールや浴場、トレーニングルームなどを備えた「りすぱ豊橋」を整備しました。この事業はPFI法に基づくBTO方式を採用し、民間が設計・建設した施設を市に譲渡し、15年間にわたり維持管理と運営を行いました。市民の幅広い年齢層が利用できる健康支援施設としてだけでなく、環境保全や省エネルギーの意識向上にも寄与しています。
りすぱ豊橋 豊橋市資源化センター余熱利用施設 トップすぱ豊橋は、資源化センターのごみ焼却プラントで発電用に使用された蒸気を温水や冷暖房の熱源として再利用する、地球環境にやさしいエコロジーな余熱… - 保健所・保健センター
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豊橋市は、保健所、保健センター、こども発達センターなどの整備・運営事業をPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)手法で実施しました。この事業では、民間事業者が施設の設計、建設、維持管理、運営を一括して担当し、公共サービスの質の向上と効率的な運営を目指しています。具体的な経過として、平成17年3月にPFI導入検討調査を行い、平成18年3月に基本計画を策定しました。その後、平成19年12月に事業契約を締結し、平成20年12月に建設工事を開始、平成22年1月に竣工しました。これらの施設は、平成22年4月1日に「ほいっぷ」としてオープンし、市民の健康増進と福祉向上に寄与しています。
保健所・保健センター/「ほいっぷ」内の施設紹介愛知県豊橋市の公式ホームページです。豊橋市の紹介、お知らせと市への意見、くらし・環境、イベント・講座・市民活動、健康・福祉・教育、産業・事業…/豊橋市 - 豊橋市北部学校給食共同調理場
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豊橋市は、北部学校給食共同調理場の整備・運営を、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)手法で実施しました。この事業では、民間事業者が施設の設計、建設、維持管理、運営を一括して担当し、公共サービスの質の向上と効率的な運営を目指しています。具体的な経過として、平成20年12月22日に事業契約を締結し、平成22年4月12日に給食の提供を開始しました。この取り組みは、学校給食の安定供給とサービス向上に寄与しています。
- 穂の国とよはし芸術劇場 プラット
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豊橋市は、文化芸術活動の拠点として「穂の国とよはし芸術劇場プラット」を整備しました。この施設は、主ホール、アートスペース、研修室などを備え、市民の芸術文化活動の場として提供されています。詳細な情報や予約方法については、公式ウェブサイトをご参照ください。
穂の国とよはし芸術劇場プラット穂の国とよはし芸術劇場プラット。演劇・ダンスなどの舞台劇術を核とした東三河地域の新たな芸術文化の創造拠点、舞台芸術を通じた人々の出会いと交流… - 豊橋市バイオマス資源利活用施設
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豊橋市は、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)手法を活用して、バイオマス資源利活用施設の整備・運営を行いました。この施設は、し尿や浄化槽汚泥などの有機性廃棄物を処理し、バイオガスや肥料として再利用することを目的としています。事業は平成26年12月に契約が締結され、平成27年7月に基本設計が公表されました。この取り組みにより、廃棄物の有効活用と環境負荷の軽減が図られています。
- 豊橋市斎場
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豊橋市は、老朽化した斎場の再整備と運営を、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)手法を用いて実施しています。この事業では、民間事業者が施設の設計、建設、維持管理、運営を一括して担当し、公共サービスの質の向上と効率的な運営を目指しています。具体的な経過として、平成28年に特定事業の選定が行われ、平成29年に入札公告、平成30年に事業契約の締結が行われました。新斎場は令和3年4月1日から供用開始され、市民に対する葬祭サービスの充実が図られています。
豊橋市斎場豊橋市斎場のページです。 - 曙学校給食センター
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豊橋市は、学校給食共同調理場の再整備事業をPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)手法で実施しています。この事業では、民間資金を活用し、設計、建設、維持管理、運営を一括して行うことで、効率的かつ質の高い給食サービスの提供を目指しています。令和元年9月30日に事業契約を締結し、令和2年9月28日には変更契約が行われました。この取り組みにより、学校給食の安定供給とサービス向上が期待されています。
- 多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業
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豊橋市は、多目的屋内施設と豊橋公園東側エリアの整備・運営事業を推進しています。 このプロジェクトは、アリーナを核としたにぎわいのあるまちづくりを目指し、施設の設計、建設、維持管理、運営を一括して行う方式で進められています。具体的な進捗として、令和6年5月30日に落札候補者が決定され、同年7月1日に基本協定書が締結されました。その後、9月27日に特定事業契約が締結されましたが、11月22日には契約解除の申し入れが行われるなど、事業の進行に変化が生じています。これらの取り組みは、市民のスポーツ・文化活動の拠点づくりと地域活性化を目的としています。
PFI事業とは?
PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業とは、公共施設やインフラ整備などを、民間の資金やノウハウを活用して行う事業方式です。日本では1999年にPFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が施行され、本格的に導入されました。
PFI事業の流れ
- 例:「老朽化した市役所を建て替えたい」「新しい学校給食センターが必要だ」
- ここでは、行政が目的・機能・必要な規模・予算の上限などを定めます。
- 民間企業に「この要件に合う施設を、あなたのノウハウでつくって運営してくれませんか?」と提案します。
- 設計(Design)
- 民間の建築会社や設計事務所が、行政の要求に沿った設計図を作成します。
- ユーザー視点・運営効率・コストを意識した創意工夫が求められます。
- 建設(Build)
- 実際の施工は、建設会社が担当。
- この段階では、民間が自ら資金を調達して工事を進めます(行政は原則、完成するまでお金を払いません)。
- 運営(Operate)
- 完成した施設で、日々のサービスを提供します。
例:清掃、受付、警備、給食提供、機器運転、来館者対応など - 一部業務は行政が担うこともありますが、多くは民間に任されます。
- 完成した施設で、日々のサービスを提供します。
- 維持管理(Maintain)
- 建物や設備が長持ちするよう、定期点検・修理・改修を行います。
- 民間が20~30年などの長期にわたり責任を持ちます。
- 行政は、施設が完成・運用されて初めて、サービスの提供内容に応じて支払いを行います。
例:月ごとの利用実績、契約に基づく品質基準を達成した場合に支払い - 「サービス購入型」と呼ばれ、「モノ」ではなく「機能・結果」に対してお金を払うのが特徴です。
PFI事業の特徴
資金 | 民間が初期投資(行政の財政負担軽減) |
ノウハウ | 民間の効率的・柔軟な運営を活用 |
リスク分担 | リスクを民間と行政で適切に分担 |
対価 | 行政が「サービスへの支払い」を行う(完成後) |
国内のPFI事業の事例
①【神奈川県】川崎市藤崎小学校(学校施設)
川崎市では、老朽化が進んでいた藤崎小学校の建て替えに際し、PFI手法を導入しました。民間企業が設計から建設、運営、維持管理までを一括して担い、教室だけでなく、給食室や体育館なども含めた大規模整備が行われました。これにより、効率的な管理や施設の長寿命化、快適な教育環境の確保が実現しています。
②【大阪府】大阪市の市営住宅再整備
大阪市では、老朽化した市営住宅の再整備にPFI方式を導入しました。民間事業者が設計・建設・維持管理を20年間担い、建て替え後も効率的な管理運営が可能となるよう設計されています。従来の行政主導による整備とは異なり、民間のノウハウや技術が活かされ、住民の生活環境の向上と事業のコスト削減が両立しています。
③【福岡県】福岡刑務所PFI事業
福岡刑務所の再整備事業では、国として初の本格的なPFI手法が採用されました。民間企業が設計・建設を行い、さらに給食や清掃などの日常運営業務の一部も担っています。これにより、公共施設である刑務所においても、民間の効率性と品質管理が導入され、国の財政負担の軽減や業務の効率化が図られています。
④【東京都】世田谷区「総合運動場温水プール」
東京都世田谷区では、老朽化した温水プール施設の再整備にPFIを活用しました。民間事業者が施設の設計・建設だけでなく、運営・維持管理も一貫して実施し、トレーニングジムや温浴施設を併設するなど、利便性と快適性を兼ね備えた施設となりました。これにより、市民の健康づくりや地域交流の場としての価値も向上しています。
PFI事業のメリットとデメリット
PFI事業のメリット
PFIの最大のメリットは、行政が初期投資を抑えられる点にあります。施設の設計・建設・運営・維持管理を民間が一括で担うため、自治体は完成後にサービス対価を支払う方式が主流です。これにより、財政負担を分散でき、他の公共事業とのバランスもとりやすくなります。
また、民間のノウハウや効率的な経営手法が導入されることで、施設の運営がスムーズになり、利便性やサービス向上が期待できます。さらに、長期契約により維持管理まで一体的に計画・実施されるため、ライフサイクルコストの最適化が図れる点も魅力です。
行政は日々の管理負担を軽減しつつ、一定の品質を維持した公共サービスの提供が可能になります。
PFI事業のデメリット
一方でPFIにはいくつかのデメリットも存在します。まず、契約期間が長期にわたるため、途中で行政の方針や社会情勢が変化しても柔軟に契約を見直すことが難しくなります。
また、民間事業者が利益を優先しすぎると、コスト削減のあまりサービス品質が低下する恐れがあります。さらに、契約内容が不明確だったり、行政側に十分な監督能力がなかったりすると、運営トラブルや不透明なコスト発生などの問題につながる可能性があります。
PFI事業は設計段階から詳細かつ綿密な契約設計が求められ、リスク分担のバランスを誤ると、市民サービスの質に悪影響を及ぼすリスクがあります。そのため、導入には慎重な検討と専門知識が不可欠です。