豊橋新アリーナ計画で耳にする「BTコンセッション」って何?

Kアリーナ横浜

豊橋新アリーナ建設計画のニュースなどで耳にする「なんとかコンセッション方式」というワード。普段使うこともなければ耳にすることもない言葉。耳にしたとしてもほとんどの場合「なんだかよくわかんないや」で片づけてしまうような言葉。

昨年秋の豊橋市長選挙において豊橋新アリーナ計画を中止することを公約に掲げた長坂尚登氏が新市長として当選したことで、この新アリーナ建設計画について多くの市民がより深く興味を持ったのではないでしょうか?僕もその一人です。

K-Susaki

豊橋新アリーナを「作る」「作らない」だけでなく計画の中身そのものについて興味を持った豊橋市民も多いはず。

なんとかコンセッション方式って何?

豊橋新アリーナ建設計画で耳にする「何とかコンセッション方式」とは、主にPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業において使われる「コンセッション方式(Concession方式)」のことで、公共施設等運営権制度の一つです。アリーナ建設やインフラ整備においても近年よく使われているスキームです。

コンセッション方式とは?

簡単に言うとコンセッション方式とは「公共施設の運営権だけを民間に売却して、一定期間運営してもらう方式」のことです。公共施設の「所有権」は地方自治体などの公的機関に残したまま、施設の「運営権」を民間事業者に設定期間付きで譲渡する形です。

PFI事業とは?

PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業とは、公共施設の建設・維持管理・運営などを民間の資金やノウハウを活用して行う手法です。行政は民間に長期契約で業務を委ね、民間は効率的な運営とコスト削減を図ります。財政負担の軽減やサービスの質向上が期待され、学校・病院・アリーナ・上下水道などで活用されています。

コンセッション方式の特徴

コンセッション方式の特徴を簡単にまとめると以下のようになります。

所有権公共(自治体など)が保持
運営権民間企業に譲渡(一定期間)
資金調達原則、民間事業者が調達
収益運営によって得られる利用料など
契約期間20〜30年程度が一般的

コンセッション方式のメリット

自治体側のメリット

  • 初期投資を抑えられる
  • 運営に係るリスクを民間に移転できる
  • 長期的な運営計画に基づくサービス向上が期待できる

運営者側のメリット

  • 一定期間にわたる安定収益が見込める
  • 運営ノウハウを活かせる
  • イノベーションや効率化が図りやすい

コンセッション方式の主な活用分野と事例

空港事業:関西国際空港・大阪国際空港(伊丹)

関西国際空港と大阪国際空港(伊丹)は、関西エアポート株式会社がコンセッション方式で運営しています。国が空港の運営権を約2,200億円で44年間、民間に売却し、所有権は国が保持したまま、運営・管理・収益事業を民間が担う仕組みです。効率的な運営や国際競争力の強化、観光振興などを目的として導入されました。

上下水道:宮城県の事例

宮城県では、上水道・工業用水道・下水道の運営権を一括して民間に譲渡する全国初のコンセッション方式を導入しました。施設の所有権は県に残しつつ、運営や維持管理、料金徴収などを民間事業者が担うことで、経営の効率化や技術継承、災害時対応の強化を目指しています。長期的な視点で安定運営が期待されています。

道路:愛知県の有料道路「知多半島道路」など

愛知県では「知多半島道路」「名古屋瀬戸道路」などの有料道路について、コンセッション方式を導入し、20年間の運営権を民間事業者に委ねています。道路の所有は県に残したまま、料金収入や維持管理を民間が行うことで、行政コストの削減と道路サービスの質向上を図っています。料金徴収業務も含まれます。

アリーナ・スタジアム:横浜アリーナなど

横浜アリーナや地方都市の新設アリーナでは、コンセッション方式による民間運営が注目されています。自治体が施設を建設後、運営権を民間に売却し、コンサートやスポーツ大会、展示会などの収益事業を民間のノウハウで展開。自治体の財政負担を抑えつつ、多目的活用による地域活性化が期待されています。

豊橋新アリーナ計画での活用の意味

豊橋新アリーナ計画においてBTコンセッション方式を採用する意義は多岐にわたります。

まず、長期的な運営権を民間に付与することで、三遠ネオフェニックスによるプロスポーツやコンサート、展示会などの収益性の高いイベント運営が可能となり、継続的な収益確保が期待できます。

また、初期投資や維持管理の一部を民間が担うことで、自治体の財政負担を抑えることができ、市民サービスの充実にもつながります。

さらに、商業施設や飲食店などとの複合開発がしやすく、地域に人を呼び込む拠点としての機能も強化されます。加えて、スポンサー企業の誘致やマーケティング展開において、民間の柔軟な発想やノウハウを活かせるため、施設の魅力や収益性を高めやすく、地域活性化に大きく貢献する計画といえます。

コンセッション方式のバリエーション

さて、コンセッション方式には「Rコンセッション」や「BTコンセッション(豊橋新アリーナはこれ)」などのバリエーションがあります。これらは、施設の建設や更新の有無、事業の構成によって分類されるものです。

Rコンセッション(Rehabilitation)

概要:既存施設を民間が改修・運営する方式
特徴:大規模な新設はせず、既存設備の活用+改善にフォーカス

BTコンセッション(Build-Transfer)

概要:民間が施設を新たに建設して公共に譲渡し、運営権を得る方式
特徴:建設リスクも民間が負担。所有権は公共に戻る

DBOコンセッション(Design-Build-Operate)

概要:民間が設計・建設・運営を担う
特徴:運営終了後の施設の帰属は契約による(BOTとの違い)

OMコンセッション(Operate-Maintain)

概要:公共が建設済みの施設を、民間が運営・維持管理のみ行う
特徴:比較的短期契約に向く。建設リスクなし


ROTコンセッション(Rehabilitate-Operate-Transfer)

概要:民間が老朽施設を改修→運営→返還
特徴:長寿命化+効率運営の組み合わせ

各コンセッションの比較

スクロールできます
名称建設改修所有権運営権備考
Rコンセッション×公共民間例:老朽化上下水道施設
BTコンセッション×公共(建設後)民間例:新アリーナ・新庁舎など
DBOコンセッション契約による民間総合委託型で契約が複雑になりがち
OMコンセッション××公共民間運営重視、コスト削減が主眼
ROTコンセッション×公共(返還)民間(期間中)長寿命化+技術導入が狙い

各コンセッションのよく使われるケース

Rコンセッション上下水道、廃棄物処理施設
BTコンセッション新アリーナ、新駅ビル、道の駅、複合施設など
OMコンセッション公共体育館、文化ホール、図書館など
ROTコンセッション古い空港、浄水場、トンネルなど

全国各地のアリーナの事例

有明アリーナ(東京都)

有明アリーナ(東京都)
方式

DBO+コンセッション(日本初のスポーツ施設での本格導入)

成果

民間運営によって、年間200件を超えるイベント開催や施設稼働率の向上を実現。プロスポーツ・音楽・展示会など多用途に活用。

問題点

周辺地域との連携や、民間主導の収益重視により「地域貢献が見えにくい」という声もある。地域との関係性づくりが課題。

愛知県新体育館(IGアリーナ)

愛知県新体育館(IGアリーナ)
方式

BTコンセッション方式

成果

県の財政負担を抑えつつ、民間の投資とノウハウで設計・建設・運営を一体的に進行。プロバスケやコンサートの収益で回収可能と見込まれる。

問題点

建設費用高騰への対応や、採算性に不安がある場合、公共側もリスクを一部負う必要がある点。想定より利用が伸びなかった場合の調整が必要。

秩父宮ラグビー場(東京都)

秩父宮ラグビー場(東京都)
方式

BTコンセッション

成果

老朽化した競技場を再整備し、民間の柔軟な経営でイベント収益向上を狙う。

問題点

国有地の活用や開発権限との調整が必要で、民間の自由度に制約あり。周辺住民の理解や交通対策も未解決の課題。

等々力スタジアム(神奈川県川崎市)

等々力スタジアム(神奈川県川崎市)
方式

BTコンセッション(予定)

成果

スポーツを軸にした複合施設開発として、民間のマーケティング力を活かした地域活性化を期待。

問題点

地元商店街や住民との合意形成が必要で、「市民と距離のある開発」に陥らないような対話の場づくりが不可欠。

Globe Sports Dome(岡山県津山市)

Globe Sports Dome(岡山県津山市)
方式

ROT型(老朽施設を改修+運営移管)

成果

旧プールを改修し、地元健康施設として再生。運営も地元企業が担い、地域密着型のモデルとなっている。

問題点

施設が小規模で収益性が限定的なため、行政の補助や地域のボランティア協力が運営を支える面もあり、完全な自立経営は難しい。

豊橋市が計画を進めてきた新アリーナについて

豊橋市が計画を進めてきた新アリーナは、BTコンセッション方式を採用しています。これは、民間資金等活用事業(PFI)の一形態で、以下のようなプロセスで進行します。

設計・建設(Build)

​民間事業者がアリーナの設計と建設を行います。​

所有権移転(Transfer)

完成した施設の所有権を豊橋市に移転します。

運営権設定(Concession)

​市は民間事業者に対し、一定期間の運営権を付与し、事業者は施設の維持管理や運営を行います。​

この方式の特徴は、設計・建設から運営までを一体的に民間が担うことで、効率的な施設運営とサービス向上が期待できる点です。​

豊橋新アリーナ計画の概要

所在地

豊橋公園内

施設内容

メインアリーナ(バスケットボールコート3面分)、サブアリーナ、武道場、弓道・アーチェリー場、多目的室、トレーニングルームなど​

収容人数

プロスポーツ開催時約5,000席、コンサート時約5,200席

事業方式

BTコンセッション方式​

事業期間

設計・建設後、運営権は一定期間(例:30年間)付与される予定​

事業費

​詳細な金額は公表されていませんが、民間事業者が設計・建設費を負担し、運営収益で回収するスキームです。

期待される効果

民間ノウハウの活用

​民間事業者の専門的な知識や経験を活かし、効率的な運営とサービス向上が期待されます。

財政負担の軽減

​初期投資を民間が負担するため、市の財政負担が軽減されます。​

地域活性化

プロスポーツやコンサートなどのイベント誘致により、地域の賑わい創出が期待されます。

課題と検討事項

収支バランス

運営収益で建設費や維持管理費を賄う必要があり、収支計画の精査が重要です。

交通アクセス

イベント時の交通混雑対策や駐車場整備が求められます。​

市民理解の促進

事業内容や効果について、市民への丁寧な説明と理解促進が必要です。

このように、豊橋新アリーナ計画はBTコンセッション方式を採用し、民間の力を活用した新たな公共施設整備を目指しています。ただこれらの計画は2024年秋の豊橋市長選挙で初当選した長坂尚登氏が公約通りストップしている状態です。

K-Susaki

現在計画中止に向かっている豊橋新アリーナ建設ですが、私たち市民も計画の中身について詳しく知りながら「賛成」「反対」の意思を示したいものですね。それにしても建設推進派の市議会議員の必死さと言ったら…他の市政もこれくらい頑張ってほしいものですww