豊橋新アリーナ住民投票を目前に控えた豊橋公園を歩いてみた

豊橋新アリーナ住民投票を目前に控えた豊橋公園を歩いてみた

いよいよ「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」の継続の賛否を問う住民投票が目前に迫ってきました。報道によれば既に期日前投票を済ませている市民もかなり多いようで、ぼくも既に投票を終えています。今日は街中まで出かける用事があったので豊橋公園を少し散策してきました。

豊橋公園はそう頻繁に来る公園ではないのですが子供が小学生の頃は豊橋まつりの時の子ども造形パラダイス、夜店、たまに豊橋美術博物館に訪れたりする公園です。ぼくは中高生の時陸上部だったので公園内の陸上競技場は試合のたびに通った思い出の場所でもあります。

陸上競技場は土のトラックでしたが当然今はオールウェザーのトラックでスタンドも当時に比べればかなりキレイになっています。ただそれ以外の施設については僕が高校生、もう40年以上前のことですがあまり変わっていない気がします。

そんな豊橋公園を一新しようという事業が今回の住民投票で賛否が問われる「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」なのですが、どうも「豊橋新アリーナ建設」が前面に出ています。

豊橋公園の現在の状況を確認

豊橋公園の現在の状況を確認

今回の「多目的屋内施設および豊橋公園東側エリア整備・運営事業」では、公園マップでいうと右半分、現在野球場があるあたりを中心に整備する計画です。その一環として、新アリーナの建設が予定されており、老朽化が進む弓道場や武道場もアリーナ内部に移転・整備する案が盛り込まれています。

新アリーナの話ばかりが先行していますが、本来の整備計画はもっと広範囲にわたるものです。だからこそ、現状の豊橋公園がどうなっているのか、実際に歩いて確かめてみることにしました。

平日の静かな公園にて

ぼくが訪れたのは平日の昼下がり。午前中に少し雨が降ったせいか、公園内はしっとりとした空気に包まれていて、どこかひんやりとした静けさが漂っていました。

木々の間をぬうように歩いていると、虫取り網を手にした子どもたちの姿が目に入りました。自然の中で遊ぶ姿はどこか懐かしく、こうした時間を過ごせる場所が身近にあるというのは、やはり大事なことだと改めて思わされます。

豊橋公園施設の現状を見て回る

施設も順に見ていきました。

まず陸上競技場。これは先ほども触れた通り、とてもきれいに整備されています。オールウェザーのトラック、清潔感のあるスタンド、そして何より今も現役の高校生たちが元気に練習している姿が印象的でした。中の写真も撮ろうかと思いましたが、練習中の生徒たちのことを考え、今回は遠慮しました。

一方で、その他の施設に目を向けると、少し時代を感じさせるものも多くあります。

テニスコートはフェンスやコート面に劣化が見られ、決して使えないというわけではないのですが、「古さ」は否めません。弓道場や武道場についても同様で、壁や屋根の色褪せ、建物自体の構造が昭和の香りを漂わせていました。これらの施設がアリーナに統合されるという話には、それなりの合理性もあるのかもしれません。

自転車の列が示す豊橋公園の役割

印象的だったのは、陸上競技場の周辺にずらりと並ぶ自転車の数でした。中高生と思われる生徒たちが部活動の拠点として利用しており、豊橋公園が今も地域の「日常の場所」として息づいていることが感じられます。

ふと気になったのは、新アリーナが建設され、大規模なイベントが開催されるようになったとき、この日常風景はどうなるのだろうということです。混雑や利用制限が起これば、こうした日常の延長にある風景が失われてしまうかもしれません。

豊橋公園は、決して観光地やイベント会場としてだけの存在ではなく、地域の暮らしに根ざした公共空間であるということを、あらためて実感しました。

豊橋公園内の中断している工事

また、豊橋球場の横には工事現場事務所と思われるプレハブが建てられ、野球場への立ち入りは現在も制限されたままです。この中断された状態を、いつまでも放置しておくわけにはいかないと感じているのは、きっとぼくだけではないはずです。

とはいえ、「この状況を打開するにはアリーナ計画に賛成するしかない」というような二者択一の構図には、多くの市民が違和感を抱いているのではないでしょうか。実際、「工事が止まっているのは困る、けれど今のアリーナ計画の進め方には納得できない」と語る声は、ぼくの周囲でも少なからず聞かれます。

税金を使った投資は本当に必要なのか?

そもそも、今回の事業が「豊橋公園の整備」と「新アリーナの建設」を一体化しているからこそ、賛否が分かれてしまっているのではないでしょうか。推進派の主張では「未来の子どもたちへの投資だ」と語られ、反対の立場の人々に対して「後ろ向き」や「ネガティブ」といったレッテルが貼られる場面も見受けられます。

たしかに、投資には前向きな意味があります。しかし、ここで使われるのは民間資金ではなく、市民の税金です。民間企業や個人であれば、どんなリスクを取っても自由に投資できますが、公共事業においてはその使い道に納得できる説明責任が伴うはずです。

それでは、「子どもたちのための投資」とまで言うのであれば、なぜ市の財界や有力企業の皆さんは、民間資金でこのプロジェクトを後押ししようとしないのでしょうか?

「投資は必要。でもその費用は市民の税金で」というスタンスに、違和感を抱く市民は少なくありません。これが、現在の住民感情のリアルな一面ではないかと感じています。

アリーナを作らないと豊橋は「死ぬ」のか?

豊橋新アリーナの建設を強く推進している「新アリーナを求める会Neo」の代表・小林佳雄氏は、動画メッセージの中で「豊橋新アリーナを作らないと豊橋は死ぬ」と発言しています。

この「豊橋は死ぬ」という表現が何を意味するのか、正直なところぼくにはよく分かりません。ただ一つ言えるのは、小林氏はBリーグ・三遠ネオフェニックスのサファイアパートナーである「物語コーポレーション」の会長でもあるということです。つまり、今回の新アリーナを最も活用する立場の企業のひとつのトップが、その建設を「地域の生死」にまで結びつけて訴えているわけです。

サファイアパートナーである「物語コーポレーション」

もちろん、地域の未来を思っての発言であるとは思いますが、その利害関係がゼロではない立場の方が、「アリーナがなければ豊橋は死ぬ」と断言するのは、少々極端であり、市民の冷静な判断を促すという意味ではあまり健全とは言えないのではないでしょうか。

公共施設の整備は冷静な議論と納得のプロセスを経て決めていくべきものであり、危機感を煽るような言葉によって誘導されるものではないはずです。

推進派の市議会議員にも不信感が

ぼくは以前、約500世帯の規模の自治会で会長を務めていたことがあります。そのとき、いわゆる「校区推薦」という形で、ある市議会議員候補の選挙活動に関わることになりました。積極的に応援していたわけではありません。自治会長という立場上、断れずに関わらざるを得なかった、というのが正直なところです。

その後、その市議会議員に対して、地元の声として小学校の通学路の安全対策について相談を持ちかけたことがありました。通学時間帯の交通量や見通しの悪い交差点など、現場を見ればすぐにわかる課題があったのですが、彼は現地に足を運ぶこともなく、特に働きかけがあった様子もありません。結果的に、何も解決しませんでした。

そんなふうに地元の切実な声には耳を傾けなかった彼が、今は豊橋新アリーナの推進派として、新聞などでも頻繁に名前を目にする存在になっています。その姿勢の変化に、どうしても違和感を覚えます。

もちろん、推進派の市議会議員すべてがそうだとは思いません。しかし、少なくとも「彼」の言動からは、市民の声を丁寧にすくい上げようとする姿勢は感じられませんでした。そのことが、ぼくが推進派全体に対して不信感を抱く一因となっています。

だから、ぼくは期日前投票で「反対」に〇をつけてきました。