信州遠山郷・旧木沢小学校で小学生時代にタイムスリップ

ヤマハボルト@もっくる新城

連日の真夏日と熱帯夜が続いていますが、夜明け前のひとときはバイクに乗るにはまさに絶好の時間帯です。休日ともなれば、朝4時半には起きて身支度を整え、ひとまずバイクでどこかへ出かけるのが最近の楽しみになっています。

7月中旬の日曜日。天気予報は一日中晴れ。気分も軽やかに、愛車にまたがって奥三河方面を目指しました。

まず立ち寄ったのは、新城市にある道の駅「もっくる新城」。日中は観光客で賑わうこの場所も、早朝とあって人影はまばら。車中泊をしていると思しき車が数台停まっているだけの、静かな空気が流れています。

自販機の前でしばらく迷った末に選んだのは「ホットコーヒー」。自宅からもっくる新城まではおよそ1時間の道のり。夏とはいえ、早朝の風を浴びながらの1時間は、体の芯が少し冷えてきます。そんなとき、温かいコーヒーがちょうどいい。

コーヒーを片手に、Googleマップを開いて「さて、今日はどこを走ろうか…」と静かに思案する。この時間がまた、たまらなく贅沢です。

信州遠山郷・旧木沢小学校を目指す

行き先を決めかねていたものの、ふと「旧木沢小学校に行こう」と思い立ちました。信州・遠山郷にあるこの小学校には過去に2度ほど訪れたことがあります。昭和7年に建てられたという木造2階建ての校舎は、どこか懐かしさを感じさせる佇まいで、心がほっとする場所です。

僕自身、小学校の頃はまだ木造校舎が残っていて、1年生・2年生・4年生の教室はすべて木造でした。その校舎のすぐ隣にあった給食室も木造で、4時間目の終わり頃になると、扉の隙間から漂ってくるおいしそうな匂いにそわそわした記憶が蘇ります。勉強どころじゃなかったなあ、と今になって微笑ましく思い出されます。

もっくる新城を出発し、国道151号線をそのまま北へ。豊根村の道の駅「豊根グリーンポート宮嶋」で小休憩。この豊根グリーンポート宮嶋ではバイク関連商品を扱うデイトナさんがやってる「朝活cafe!」があります。せっかくなどで梅ソーダで一息。

その後、長野県に入ってしばらく走ると「道の駅 信州新野千石平」が見えてきます。そこから国道418号に入り、旧木沢小学校を目指します。

国道418号は、天龍村を越えたあたりから天竜川の支流・遠山川に沿って走るワインディングロードになります。自然の緑に包まれたその道は、路面も整備されていてとても走りやすく、バイクで流すには理想的なルートです。

停車してヘルメットを外せば、耳に届くのは川のせせらぎと木々のざわめき。深呼吸すれば、森の香りとひんやりした空気が胸いっぱいに広がり、日常の喧騒などすっかり忘れてしまいます。

信州遠山郷・旧木沢小学校で小学生時代へタイムスリップ

信州遠山郷の山里に佇む、昭和7年築の木造2階建校舎。旧木沢小学校。1階と2階にはそれぞれ教室が配置され、裏手には理科室や音楽室も残ります。教室内には、当時の机やランドセル、習字道具といった学校備品がぎっしりと展示され、まるで当時の子どもたちが今にも戻ってきそうな空間です。

地域のボランティアによって大切に保存され、廃校後も資料館やイベントスペースとして活用されており、地元住民が手掛けた温かい展示が並んでいます 。たとえば、2年生教室は南アルプスに関する資料展示、4年生教室は森林鉄道にまつわる林鉄資料館となっていて、5年生教室は地元・木沢地区の霜月祭りについて学べるスペースに。図書室には旧蔵書や寄贈本が4,000冊以上も並び、静かな読書の場としても親しまれています 。

教室の黒板や廊下の音、校長室に飾られた将棋盤やオルガン…どれをとっても昭和の匂いがそのまま。以前は校舎内にはねこ校長とも呼ばれる猫が自由に出入りし、地元住民にも観光客にも愛される存在になっています 。入場は基本無料で、校舎維持のための協力金を募っているため、ふらりと立ち寄りやすいのも魅力です 。

ここを訪れると、単なる郷愁ではなく、実際に自分が小学生だった頃へ時代を戻されたような錯覚に包まれます。机の角、木製のドア、黒板に残るチョークの跡…すべてが昭和の香りを湛え、まさにタイムトリップと呼ぶにふさわしい場所です。

帰宅後の洗車・そしてビール

その後も南信州の山々を気の向くままに走り、夕方には無事帰宅。メーターを確認すると、下道オンリーでおよそ400キロ。のんびりペースながら、よく走ったものです。山道では路面に水が流れている場所も多く、バイクはすっかり泥だらけ。走り終えたら、まずは感謝の気持ちを込めて丁寧に洗車です。

そして風呂に入って、冷えたビールを一杯。

体の疲れも、心の疲れも、一気に吹き飛ぶようなこの瞬間が、何よりのご褒美です。静かに暮れゆく夏の一日。ボルトのエンジンの鼓動とともに刻まれた思い出が、またひとつ増えました。