2025年8月4日

先日、豊橋新アリーナ建設事業で豊橋市が企業版ふるさと納税を開始したとの報道がありました。8月25日には個人版ふるさと納税も受け付け開始とのことです。ふるさと納税をされている方は結構いるのでしょうけど「企業版ふるさと納税」というものは庶民にはいまいちよくわかりません。まず、企業版ふるさと納税というのがどういうものなのか簡単に解説してみましょう。

企業版ふるさと納税とは?
正式名称は「地方創生応援税制」です。企業が国に認定された地方創生プロジェクトに寄附することで、法人関係税から税額控除を受けられる制度です。
寄附額の約3割は損金算入(経費扱い)、さらに約6割が税額控除されるため、合計で最大約9割の税負担が軽減され、企業の実質的な負担は約1割まで圧縮できます。
税目 | 控除の割合(上限) |
---|---|
法人住民税 | 寄附額の4割(法人税割額の20%が上限) |
法人税 | 寄附額の1割(法人税額の5%が上限) |
法人事業税 | 寄附額の2割(事業税額の20%が上限) |
企業版ふるさと納税制度の適用条件と注意点
- 寄附先は内閣府が認定する「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」であること
- 1回の寄附は10万円以上であること
- 本社所在地の自治体への寄附は対象外(豊橋市本社企業は対象外)
- 寄附の見返りとして経済的利益を受けてはいけない(契約優遇など)
- 寄附企業名・金額が公表される可能性がある
さらに、制度は2025年4月1日から2028年3月31日まで適用期間が延長されています。
豊橋市の新アリーナ事業と寄附の概要
寄附受付開始
- 受付開始日:2025年8月1日(金)
事業内容
- 新アリーナ・多目的屋内施設および豊橋公園東側エリアの整備・運営
- スポーツ、コンサート、展示会など多目的利用や災害時の防災拠点機能強化を目指す事業
寄附手続きの流れ(一般的な流れ)
- 寄附先(豊橋市の認定事業)を選定
- 豊橋市窓口に問い合わせて必要書類を確認(寄附申込書、利用計画書 等)
- 書類提出・寄附金支払い
- 寄附証明書を受領し、法人税等申告時に特別控除を申請
企業にとってのメリットと意義
- 大幅な税負担軽減で実質的な負担は約1割
- CSR(社会貢献活動)としての企業イメージ向上
- 地域との信頼関係構築や新規事業・PRの機会にもつながる
企業版ふるさと納税をする上での注意点
- 税額控除を受けるには、自治体側の国への報告や透明性確保が必須
- 企業名や寄附額が公表される可能性がある
- 本社が豊橋市にある企業は対象外
企業版ふるさと納税は、寄附額の最大9割が税制上で優遇されるため、企業の実質的な負担はおよそ1割まで軽減されます。豊橋市の新アリーナ整備事業は、2025年8月から寄附の受け付けを開始しており、この制度の対象となる地方創生応援税制の認定事業です。寄附を検討する企業は、本社所在地や寄附額、見返りの有無などの条件をしっかりと確認し、事前に自治体へ相談することが重要となります。
豊橋新アリーナ建設事業と企業版ふるさと納税への疑問
豊橋市では、新アリーナ建設と豊橋公園東側エリアの整備事業に対して、2025年8月から企業版ふるさと納税の受付を始めました。企業版ふるさと納税は、企業が地方創生事業に寄附することで法人税や住民税が最大9割控除される制度で、企業にとっては実質負担をおよそ1割に抑えながら地域貢献できる仕組みです。
便利な制度だなと思う反面、ぼくはどうしてもいくつかの疑問を感じています。ここでは、特に「本来の税金が別のことに回ってしまうのではないか」という点と、「サポーター企業や運営会社が寄附することの問題」について整理してみます。
本来の税金がアリーナに流れてしまうのでは?
まず気になるのは、企業版ふるさと納税を使うと、企業が寄附したお金の最大9割が税額控除されることです。つまり、企業は寄附額の大半を本来なら国や自治体に納める税金から差し引くことになります。そうすると、ぼくはどうしてもこう思ってしまうのです。「本来ほかの公共サービスや地域のために使われるはずだったお金が、結果的に豊橋のアリーナに回ってしまうんじゃないか?」と。
制度の仕組み上、企業は一度は税金を納めていますし、直接的に「税金が豊橋に奪われる」というわけではありません。それでも、国全体で見れば税収は減り、結局は別の地域や公共サービスにしわ寄せがいく可能性は否定できません。地域の大型事業を企業寄附で進めることに対して、ぼくはどうしてもモヤモヤした気持ちを抱いています。
サポーター企業の寄附は制度趣旨に合うのか?
SNSでは、三遠ネオフェニックスにかかわる企業に対して「企業版ふるさと納税で新アリーナを支援してほしい」という声も見られます。ファンや市民の立場からすると、チームを支える企業がアリーナ建設にも協力することは自然な期待に思えるのかもしれません。
さらに気になるのは、三遠ネオフェニックスを支えるサポーター企業が企業版ふるさと納税を活用する場合です。制度上、本社が豊橋市外にあれば寄附は可能ですし、税制上も優遇されます。でも、ぼくはここに別の懸念を感じます。
企業版ふるさと納税の趣旨は、あくまで「地域振興や防災、公共目的の事業支援」です。ところが、ホームアリーナになる施設にサポーター企業が寄附すると、どうしても「チーム支援の延長」に見えてしまうんです。寄附企業名や金額が公表されたとき、市民からは「実質的にはチーム支援をしながら税控除を受けているのでは?」と思われても仕方ない気がします。制度的には問題なくても、印象の面で疑問が残ります。
運営会社スターツの寄附は公正性の問題にならないか?
そして、ぼくがもう一つ気にしているのは、もしも新アリーナの建設・運営を担うスターツコーポレーションが寄附した場合です。多分そんなことはしないと思いますが、SNS上にスターツコーポレーションに対して企業版ふるさと納税を求めるような投稿がもしかすると出てくるかもしれません。本社は豊橋市外なので制度上は寄附できますが、運営事業者が企業版ふるさと納税で寄附することには、やはり公正性の疑問がつきまといます。
制度では「寄附に対して経済的利益を与えてはいけない」とされています。でも、運営会社はすでに事業そのもので利益を得る立場です。寄附と事業契約が結びつけば、「見返り寄附じゃないのか?」と疑われる可能性は高いと思います。市民の目から見れば、企業が税控除を受けつつ、自社の利益につながる施設を建てているように見えてしまうかもしれません。こうした構造は、ぼくにはどうしても納得しづらいのです。
そもそもふるさと納税がヘンだと思ってるし
企業版ふるさと納税は、企業にも自治体にも便利な制度です。でも、新アリーナ建設のように特定のスポーツチームや事業者と強く結びつく事業では、税の公平性や制度の趣旨に反して見える場面が多いと、ぼくは感じています。
本来の税金が間接的に豊橋の施設建設に偏ることや、サポーター企業・運営事業者による寄附が「見返り寄附」と受け取られる懸念は拭えません。制度を使うなら、寄附の目的や契約の分離、公表の透明性を徹底することが、市民の納得を得る最低限の条件だと、ぼくは思っています。
さらに、8月25日からは個人版のふるさと納税の受付も始まるそうです。個人版は、他の自治体に住む人が豊橋市に寄附すると、翌年の住民税などが控除される仕組みです。これも、ぼくから見ると「本来は自分が住む自治体に納められるべき税金が、豊橋市のアリーナ建設に回ってしまう」という問題を抱えていると思います。結果的に、自分が住んでいる地域の道路整備や福祉サービスなどに使えるはずのお金が減るのですから、全国的な公平性の観点で見ても疑問が残ります。
そもそも、ぼくはふるさと納税という制度そのものに反対です。制度が始まった当初は、都市部から地方への税収移転という美しい理念が語られていましたが、今では返礼品競争や特定事業への資金集中が目立ち、今年はコメの返礼品が大人気と報道されています。本来の税金の役割がゆがめられているように感じます。今回の豊橋新アリーナのような大型事業がふるさと納税を通じて進められることに、ぼくはやはり強い違和感を持っています。