2025年12月19日

「もう使っていない」は通用しない、行政サイトの見えないリスク

自治体のサイトだから安心だと思った
もし市民がそう信じてアクセスした先が、アダルトサイトやオンラインカジノだったらどうでしょうか。
2025年12月19日、中日新聞で報じられた記事は、多くの自治体関係者やウェブ担当者にとって、決して他人事ではない内容でした。
自治体がかつて使っていた旧ドメインが、第三者に取得され、アダルトサイトや詐欺まがいのサイトに転用される事例が、愛知・三重・岐阜・福井・滋賀と各地で相次いでいるというのです。
実はこの問題、突然起きたわけではありません。
私は以前、自身のウェブサイトで「自治体や公共性の高いサイトが、ドメイン管理を誤ることで生じる危険性」について記事を書いたことがあります。
しかし今回の報道を見て、問題はむしろ拡大していると感じました。
「サイトを閉じた=役目は終わり」ではない
多くの自治体では、イベントや補助金、新型コロナ対策など、期間限定の事業を周知するために特設サイトを作ります。その際、公式サイト(lg.jp)とは別に、新たにドメインを取得するケースも珍しくありません。
問題は、その後です。
- 事業終了
- サイト閉鎖
- 更新停止
- ドメイン失効
この流れの中で、

もう使わないから問題ない

誰も見ないはず
と判断され、ドメインが手放されてしまう。
しかし、ドメインはインターネット上の住所です。空き家になった住所に、誰かが勝手に看板を掲げることができるのと同じで、期限切れのドメインは第三者が取得できます。
しかも、自治体が一度使ったドメインは、
- 検索エンジンからの評価が高い
- 古いリンクがネット上に残っている
- 市民の記憶に残っている
という理由から、悪用する側にとって非常に「おいしい」存在です。
先に紹介した私の記事の中でも書いていますが、失効したドメインはオークションにかけられることがあり特に行政機関が使っていたドメインは人気があり記事で紹介した「あいスタ」のドメインは100万円以上で落札されていました。
「自治体が使っていた」という信用が、そのまま悪用される
中日新聞の記事では、以下のような事例が紹介されていました。
- 新型コロナ対策の特設サイト → アダルトサイト
- スタートアップ支援拠点のサイト → スロット・オンラインカジノ
- プレミアム商品券サイト → ウイルス警告を装う海外サイト
- 自然保護センター → オンラインカジノ
どれも共通しているのは、「元は自治体の公式事業サイトだった」という点です。
市民から見れば、

前に県が使っていたURLだから

検索で上に出てくるから
という理由で、疑いなくアクセスしてしまう可能性があります。これは単なる「イメージダウン」ではなく、詐欺被害・情報漏洩につながりかねない重大な問題です。
なぜ同じ問題が繰り返されるのか
総務省は以前から、
- lg.jpドメインの活用
- 不要になったドメインの一定期間保持
- 段階的な検索順位低下を待つ運用
といった対策をガイドラインで示してきました。それでも問題が繰り返される背景には、いくつかの構造的な要因があります。
職員の異動と知識の断絶
担当者が異動すると、「そのドメインがなぜ作られたのか」「いつまで管理すべきか」が引き継がれないケースがあります。
情報システム部門との分断
事業担当課が業者に任せきりでサイトを作り、情報政策・DX部門が把握していないまま閉鎖される。
「サイトは作って終わり」という発想
公開後の運用・廃止・後処理が軽視されがちです。これは、決して個々の職員の怠慢ではなく、自治体のデジタル運用体制そのものの課題だと感じます。
自治体DXとは「作ること」ではなく「守ること」
DXというと、
- デジタル化
- 便利なサービス
- 新しいサイト
に目が向きがちです。しかし、本当に必要なのは、
- 情報をどう管理するか
- 信用をどう維持するか
- 使い終わった後をどう処理するか
という地味だけれど重要な部分です。ドメイン管理は、その象徴的な例だと思います。
市民として、制作者として思うこと
私はウェブ制作者として、また自治会活動に関わってきた一人の市民として、今回の報道を見て強い危機感を覚えました。「自治体が使っていたURLだから安心」この信頼が裏切られることは、行政への不信にも直結します。
同時に、「業者に任せていたから分からなかった」では済まされない時代に入っているとも感じます。
おわりに:見えないリスクこそ、丁寧に
ドメインは、目に見えません。使っていなければ、存在していないようにも思えます。
しかし、「見えないからこそ、管理が必要」それが今回の一連の事例が教えてくれる教訓ではないでしょうか。
自治体のウェブサイトは、単なる情報発信ツールではなく、行政の信用そのものです。
作るときだけでなく、終わらせ方まで含めて、「公的サイトとしての責任」を考える必要がある。
今回の記事を通じて、市民にも、自治体職員にも、制作者にも、そのことが少しでも伝わればと思います。
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