2025年3月14日

まもなく新年度となりますね。自治会や町内会ではさまざまな準備が必要になります。その中でも特に重要なのが「自治会費・町内会費の徴収」です。僕の住む自治会においても4月1日の組長会議で最初の仕事として自治会費の徴収についての説明があります。自治会の活動を円滑に運営するためには、住民からの会費が不可欠ですが、近年、徴収に関する課題が増えているのも事実です。
特に問題となっているのは、住民の意識の変化です。かつては地域のつながりを大切にし、自治会への加入や会費の支払いが当然とされていました。しかし、ライフスタイルの多様化や価値観の変化により、

自治会の活動に参加しないから会費は払わない

そもそも自治会に加入しなくても困らない
と考える人が増えています。さらに、役員の高齢化や、会費の徴収方法が時代に合っていないことも、未納問題を深刻化させる要因となっています。
昨年度まで自治会長を2年務めた経験から自治会費・町内会費の徴収に関する現状を整理し、未納を防ぐための工夫や、負担を減らす徴収方法について考えていきます。新年度のスタートに向けて、スムーズな会費徴収の仕組みを作るためのヒントになれば幸いです。
なぜ自治会費・町内会費が必要なのか?
自治会費や町内会費は、地域住民が安心して快適に生活を送るための様々な活動を支える貴重な財源です。具体的には、夜間の安全を守る防犯灯の設置やその電気代、地域の美化を目的とした清掃活動、防災訓練の実施、さらには夏祭りや敬老会といった地域交流を促進するイベントの開催にも使われています。こうした取り組みは、自治体の行政サービスだけでは十分に対応できない地域固有の課題や要望に対して、住民自らが主体となって取り組むために必要不可欠なものです。
しかし一方で、

なぜ自治会費や町内会費を払う必要があるのか?
という疑問を持つ住民が増えていることも事実です。この疑問に対しては、まず会費の使途を明確にし、実際にどのような活動やサービスに役立っているのかを丁寧に説明することが大切です。
例えば、防犯灯について僕も自治会長を務めるまで防犯灯の設置費用や電気代が自治会費から支出されていることは知りませんでした。防犯灯が地域にあることによって犯罪や事故の抑止につながることからとても重要です。また、街頭消火器の設置費用、メンテナンス費用も自治会費から支出されていますし、ゴミステーションの補修メンテナンスも自治会で費用を支出し担当の委員が行っています。このようなゴミステーションの維持管理が地域の美観を保つだけでなく、不法投棄などの問題を防ぐことにも役立っています。
このような自治会の活動が地域の安全や資産価値の向上にもつながっていることを伝えることで、住民の意識も変わります。自治会費や町内会費はただ払うだけのものではなく、自分たちの生活を豊かで安全なものにするための投資で住民がその活動に積極的にかかわることがより良い地域につながることを理解してもらうことが重要です。
僕の住む自治会の自治会費の使い道
僕が住む自治会の自治会費は年間6,000円です。会費がどのようなものに使われているか紹介します。
- 集会場の維持管理費
- 防災備蓄品購入費
- 防犯灯の維持管理費・電気代
- 街頭消火器管理費
- ゴミステーションの管理費
- 夏まつり・秋まつり・クリスマスイベントなどの行事費
近年増加する会費未納、退会問題について
近年、多くの自治会や町内会では会費の未納が深刻な問題となっています。その理由として、まず挙げられるのが「会費の必要性が住民に伝わっていない」ということです。僕が住む自治会においては前期、後期で組長さんが各会員宅を訪問して集金しているため「未納」問題はあまりないのですが、その代わり「退会」を申し出る方が増えてきています。
「退会」の問題は自治会費未納の問題以上に自治会の存続にかかわる深刻な問題です。このような考え方に至るのは自治会の活動内容や自治会費が具体的にどのように活用されているのかが明確に伝わっていないため、

払っても払わなくても同じだ

自治会に入っていなくても同じだ
と感じる住民が増えているからと想像できます。
また、住民が自治会にかかわることの負担感が高まっていることも原因の一つです。特に若い世代や共働き世帯にとっては、自治会活動への参加が難しく、会費の支払いに抵抗感を覚える場合があります。その結果として

自分たちはほとんど自治会の行事や活動に参加していないのに、なぜお金を払わなくてはいけないのか?

自治会が何をしているのかさっぱりわからない
という意識が強まってしまうのです。
さらに、自治会費の未納問題についての原因としては自治会や町内会の会費の徴収方法が時代に合っていない点も挙げられます。毎月毎月、現金を直接訪問や手渡しで集金する従来のやり方は、住民にとっても役員にとっても負担が大きく、支払い忘れや面倒さから未納が増えてしまう要因となっています。
こうした未納の増加、退会を希望する人の増加は自治会の運営に大きな影響を与えます。会費収入が減れば地域の防犯活動や環境美化、防災活動などが十分に実施できなくなり、地域の安全や暮らしやすさが低下する可能性があります。また、未納が常態化、退会希望者が増加すれば、きちんと自治会や町内会に加入し会費を納めている住民から不公平感が生まれ、自治会活動、町内会活動そのものが停滞する恐れもあるのです。
効果的な自治会費・町内会費の徴収方法を考えてみる
自治会費や町内会費の従来の徴収方法は、多くの地域で毎月現金の手渡しや組長や班長・役員による個別訪問による集金が主流となっています。しかし、この方法には多くの課題が存在します。まず、現金を直接扱うことで、役員や班長は金銭管理の責任を負い、管理負担や紛失リスクも伴います。さらに、集金作業そのものが労力と時間を要するため、役員の負担感が非常に大きくなり、自治会役員のなり手不足の原因にもなっています。また、住民にとっても、支払い日時の調整や集金時に現金を用意する煩わしさから、支払いをつい忘れてしまうケースが多発しています。
こうした課題を解決するために、効率的な徴収方法への見直しが必要です。その一つが銀行振込を利用する方法です。振込先を明確に記載した案内書を配布し、期限を明確に設定することで徴収漏れを防ぎます。ただし、振込手数料を住民負担にするか自治会負担にするかは議論が必要で、手数料負担の抵抗感が徴収率に影響を与える可能性もあるため慎重に検討する必要があります。
また、口座振替を導入する自治会も増えています。口座振替は自動的に会費を引き落とせるため、安定した徴収が可能です。ただ、銀行側の手続きや住民からの引き落とし承認が必要となり、導入にあたっては時間と手間がかかる場合も多く、すべての自治会で簡単に導入できるとは限りません。
近年注目されている方法としては、キャッシュレス決済の導入があります。PayPayやLINE PayなどのQRコード決済、クレジットカード払いを導入することで、住民はスマホから気軽に支払いを済ませられます。若年層や忙しい世帯には特に好まれやすく、利便性の向上で未納者の減少にもつながります。ただし、高齢者などキャッシュレスに慣れていない世代への配慮も欠かせません。
さらに、一年分の会費を一括で支払う年会費制を導入する自治会も増えています。月ごとの支払いと違い、一度払えばその後の手間がなく、住民にとっても役員にとっても負担軽減につながります。僕の住む自治会では前期と後期に分けた年2回の集金のため毎月集金するよりも負担は少ないです。ただし、一括払いに抵抗感を感じる住民への説明や配慮も必要です。
僕の住む自治会の自治会費の集金の流れ
自治会費は年間6,000円で前期、後期3,000円ずつ組長が各家庭を集金します。自治会内には40組の組があります。
自治会は4つのブロックに分けられています。それぞれのブロックは平均して10組で組織されていて組長は集めた会費をブロック長に渡します。
ブロック長は組長から預かった会費を会計に渡します。会計は合計金額だけチェックすればいいので集金の負担は比較的軽減できています。
住民に自治会費・町内会費を納得して払ってもらうには、まず会費の使い道を明確に伝えることが重要です。例えば、防犯灯の設置や清掃活動、防災備品の整備、地域イベント開催など、具体的に何に役立っているかを会報や掲示板、SNSなどで積極的に知らせましょう。
また、会計報告を定期的に配布するなど透明性を高める工夫も必要です。さらに、「会費を払うメリット」を分かりやすく説明することが効果的です。例えば、防犯灯設置による犯罪防止、清掃活動による美しい環境維持など、自分たちが直接享受できる利益を伝えることで支払いへの抵抗感が薄まります。自治会活動は住民一人ひとりの協力があってこそ成り立つものであり、会費を支払うことが「地域の安全や暮らしやすさへの投資になる」と意識づけることで、納付率の向上にもつながります。